最初の拙文「半夏生」を書いてから早2ヶ月が過ぎてしまいました。次は鱧とお約束もしました。しかし、その前に、今一度植物の話で、今回はサルスベリ「百日紅」の花について書いてみます。
鱧の旬は名残まで加えればあと2ヶ月は十分ありそうで、もう少し待っていてくれると思われるからです。鱧はまだ10月でも活躍する魚で、土瓶蒸しに入れられれば12月にだって出てきます。一方、百日も咲き続ける、夏を代表する花、百日紅もさすがに終わりが近づいています。阿寓の狭い前庭にも、やや紫色がかった花を付けているサルスベリがあります。サルスベリの季節が終わる前に、もう一度阿寓の花を見に来て下さるお客様がいらっしゃるかなと希望して、サルスベリ別名ヒャクジツコウ(百日紅)の花の構造についてお話しさせていただきます。
 所で、阿寓の庭を造園(一寸オーバーですが)してくださったのは、庭師、遠山さんです。阿寓の庭を見て気に入っていただければ、どうぞ造園やお手入れの時にはご連絡ください、喜んでご紹介いたします。
皆さんは百日紅の花のあでやかさを塊として見ていても、一つの花がどんな造作かしっかりとは見ていないのではありませんか。綺麗な物が好きな私は、特に愛でてた花木なのですが、実は私もつい先日まで一つの花をしっかりと観察した事がなかったのです。
新聞をポストから抜き出す折に、一つの花をそっとつまみ取り、良く中を見てみたら、なんと雄しべが沢山あるのです。沢山の雄しべを持つ花はそこら中にありますが、雄しべの中にとりわけ長く色も違う周りの、その他多数と明らかに違う特別なおしべ様なものが観察されたので、早速、下手の横好き流クレヨン画を物してみました。センタ付近やや右よりの柱は明らかに雌しべでとりわけ大きな柱頭でそれと解ります。中心に位置する黄色の雌しべの群れの中に、6~7本のかなり長く、やや濃い茶色の葯と花糸を持つ雄蕊があります。
ColorReduced3.jpg

緑色の萼は6個に裂け、その裂け目から、赤い細い糸が水平に飛び出し、その先にくちゃくちゃと縮れた赤い(我が家のサルスベリの場合)花びらが横向きについています。全体として、縮れた花びらが6枚、図のように額を取り囲んでいて、これが旺盛に茂った花の感じを演出していると分かります。
牧野植物図鑑をひもといても、雄蕊は多数。6本は特に長いとなっています。確かに異常に長い6~7本の雄蕊があり、他の多数のそれらとは花糸と葯の色が異なっています。もしかすると、想像ですが、この6本が本当の雄蕊で、葯の色が違っているのはこの6本だけが、花粉を作る為に成熟出来るものである事を反映しているのかもしれませんね。花が熟した頃に顕微鏡で観察すると、正解が出てくるかも知れません。来年の自由研究のテーマになるかも知れません。所で、花は葉や萼等が長い進化の中で変化したものですが、この場合の花びらをぶら下げている細い糸状の物の起原は何だったのでしょうか。知っている方はいませんか。
このような構造の花が、枝の先に円錐形に咲き乱れれば、豪華なひと固まりのブーケになる事もうなずけます。写真は正にブーケです。
SaruReduced.jpg

ところで、サルスベリはミゾハギ科と云うあまり聞きなれないファミリーの一員です。科学名はLargerstroemia indica L. ちょっと余計なことかもしれませんが、科学名は動物、植部、細菌、カビの別なく斜字体で書きます。最初が属名、次が種名になり、最後のL.は命名者で、偉大な分類学者リンネはLとだけ一文字であらわされます。例えば、Makino とか、Sieboldianusなど牧野富太郎氏とかシーボルトに由来した種名を持つ植物は沢山あります。ついでに、Largerstroemiaはリンネの友人のスエーデン人の名前Magnus von Lagerstroemに由来します。種を表すindicaは、言うまもでもなくインドを表します。種名はラテン語で性によって変化し、属名の性に支配され、変化します。中性的に変化しないものもあります。例えば、白い を意味するalbusは男性、女性、中性で、albus, alba, albumと変化して、学名の中で使用され、白いという意味を持った種名を表現します。
次回は、今度は本当に鱧にしたいと思います。料理長のきれいな包丁捌きを語る前に、鱧が終わってしまったと言うことのないようにします。
スポンサーサイト



カテゴリ
プロフィール

阿寓

Author:阿寓
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR